SEALDsに関するテキストマイニング(2)首都圏反原発連合との比較――内面的規律型行動基準から環境管理型行動基準へ――

(with KH Coder)

田村貴紀

SEALDs前回の続きです。

学会発表で使ったもう1つの図を公開します。SEALDsとの比較のために、「首都圏反原発連合」または「反原連」という単語をを含むツイートを分析したものです。研究の意図として、SEALDsや反原連に対してのメンションを焦点化したのではなく、それらをめぐるTwitter空間全体を見たかったので、そうなっています。

官邸前抗議が拡大し、車道解放が起こった2012年6月から9月にかけての89日間のデータを収集しました。
(検索式パターン:反原連 OR 首都圏反原発連合 since:2012-06-29 until:2012-09-16 -from:@MCANjp)

まず言及すべきなのは、データ量の大きな増加です。同じ期間の反原連のデータに比べて、SEALDsのデータはツイート数で9倍、データ量で 8.1倍に増加しています。しかも、SEALDsデータに関しては単語「シールズ」を含めていないので、実際はもっと多いでしょう。「シールズ」は多義的すぎたので。五野井郁夫さんが指摘するように、社会運動は「クラウド化」しているのですが、一口にクラウド化といっても歴史的変遷があるわけです。

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次にテキストマイニングの結果を見てみます。テキストマイニングは、数百という単位で単語のみ扱うという目の粗い方法なので、全体を俯瞰できるのですが、詳細についてはわからないことがあるという前提で読んで下さい。

図の右上のあたりに、「批判」や「排除」というような言葉が見えます。路線をめぐる論争があったことが窺われます。
次に左下に「拡散」などの単語があります。Twitterを利用しての拡散に意識的で、「始まったばかりのクラウド化」という印象を受けます。

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ここで、SEALDsの図と比べてみると、そこにあるようなレイシズ・セクシズム・エログロナンセンスをうかがわせるような単語は目立ちません。

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つまり、反原連の図では、路線を巡るような議論は見えるけれども、それはまだ議論や討論と呼べるような次元のものでした。(個別な事例は色々あるわけですが。)しかしSEALDsの時代になると、全く対応が不可能であるようなレイシズム・セクシズムが投げつけられるようになったということです。

 

ネットでの議論は常に難しく、場にコミュニケーションが所属するBBSから、コミュニケーションが個人に所属するようになったブログ、Twitterへの変化、ネットでのパブリックとは何か、ネット空間の公共性と親密性の融合(personal as political)などについて、今後記事を投稿したいです。

それらは次にして、この記事で強調したいのは、

あえて極論すると、 「議論が成立するような環境」から「議論が不可能な環境」へと変化したということです。典型的なのは、「プリキュア」「出会い」などに見られるボットによる攻撃で、ソフトウェアが連続発信する嫌がらせのためだけのTweetと議論のしようがありません。そうなるとサイバーテロリズムへの対応ですから、内面的規律型行動基準から環境管理型行動基準へ、対話的対応からエンジニアリング的対応へと変えざるを得なくなります。ブロック機能やリストを利用するのはその一部でしょう。

実はSEALDsは、このような卑劣な攻撃を受け続けている多くの人々の一部に過ぎません。在日外国人や差別に反対する日本人、そして安田浩一『ネット私刑』にあるように、ある日突然さしたる理由もなく多くの人が攻撃を受け、心を砕いて抵抗し、エンジニアリング的対応 を迫られています。攻撃を受けるのは、明日は私もかもしれないし、あなたかもしれません。

そして、こんな社会にしてしまった責任の多くは、誰にあるのでしょうか?選挙権を持って数年で「憲法を守れ」と言っただけで殺害予告を受けている青年や、「平和を守れ」と言ったためにセクハラ攻撃を受け続けている未成年の女子学生にあるのでしょうか?私はそうは思いません。大きな責任を感じるべき人は他にいるでしょう。重要な事は、我々はこんな社会にしてしまったということです。そしてそれを変えなくてはならない、ということです。

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